2006年07月30日

●日本、北朝鮮に敗れる

日本2-3北朝鮮

なでしこジャパン、3位決定戦に敗れる。
準決勝の暴行騒ぎによってレギュラー3人(GKハン・ヘヨン、DFソヌ・キョンスン、DFソン・ジョンスン)が出場停止となった北朝鮮は、フォーメーションをこれまでの【4-1-3-2】から【3-4-2-1】に変えてきた。

日本は中華台北戦以来、再びダブルボランチの【4-4-2】にフォーメーションを戻した。

GK福元,DF安藤・磯崎・下小鶴・矢野,MF酒井・柳田・澤・宮間,FW大野・永里

北朝鮮は、1トップのリ・クムスクが日本のCBの間に立ち、磯崎・下小鶴を中央に寄せる。そして両CBの外側(磯崎と安藤の間/下小鶴と矢野の間)を、2シャドーが斜めに走り込んで裏を取るという狙いを、明確にして臨んでいた。

前半の3失点中2つは、まさしくその動き。23分に先制されたシーンでは、スローインのボールを受けに行ったトップの選手に下小鶴がついていったため、日本の最終ラインには、磯崎と矢野の間に大きなスペースができてしまった。スローインのボールをトップの選手がスルーすると、ボールは下小鶴の股も通過してしまう。そのボールを、相手の右シャドーのリ・ウンスクが斜めに走り込んでシュート。矢野の対応が完全に遅れてしまった。

33分の2失点目は、ボックスの外で浮き球をつながれてしまい、やはりトップのリ・クムスクがワンタッチでDFの頭上に浮き球のパス。これに反応したリ・ウンギョンがループシュート。また矢野が遅れた。

39分の3点目は磯崎がロングフィードを蹴った瞬間、バレーボールのブロックのように足元にチャージされて、そのまま入れ替わられる。GK福元が一旦シュートをはじきかえすも、こぼれ球を決められた。

日本は前半43分、CKクリアされたボールを一旦下げて磯崎からロングフィード。ゴール前に残っていた澤がバックヘッドでつなぎ、やはり残っていた安藤が右足でシュート。これで3−1。安藤は、右から体を寄せてきた相手DFを右手で押し返しながら、左足1本で2人分の体重を支え、右足を振り抜いた。上半身のパワーと、ボディバランスを失わない体幹の強さは、現場で見ていてかなり衝撃的だった。

後半、日本はその安藤をあっさり替えてしまう。安藤に替えて大谷、そして大野に替えて荒川投入。荒川に対しては、はっきりいって北朝鮮も神経過敏だった。荒川の投入は明らかに遅かった。右ウイングバックに入った大谷はというと、スピードと澤との連携を生かして裏を取る動きを見せていたが、サイドでは怖さが半減してしまう。しつこうようだが、安藤をDFで起用して怖さ半減。大谷をサイドで起用して怖さ半減。かなりもったいない気がする。

そもそも日本は、選手層が薄い。薄いなかで国際試合を戦い抜くしかないんだからこそ、起用法や選手を出す順番、90分の時間の進め方などに、ミスは禁物だ。

なでしこジャパンはアジア枠でのW杯出場権を逃し、2大会続けて大陸間プレーオフに回ることとなった。対戦国が決まるのは11月。USA、カナダに継ぐ北中米カリブの3番手メキシコとの対戦が有力だ。

今大会の総括と、今後のなでしこジャパンの展望については、あらためて僕自身の考えをまとめてみたいと思います。

2006年07月28日

●日本、完敗

日本、完敗。「ただ」サッカーをやっている。そんな印象だった。

オーストラリアは、「最初の15分」を「残り15分」のように戦い、いきなりパワープレーで勝負をかけてきた。それは分析済みなはず。なのに日本は「普通に」試合に入ってしまった。10分の失点は、クリアがたまたまフリーの選手の足元に転がり、そこからのパス(ミドルシュートだったのか?)がたまたま別のフリーの選手の足元に渡ってしまった。けれど、打たれた時、体を投げ出してでもブロックする選手はいただろうか。

2失点目はミスが重なった。前半ロスタイム。0-1でリードされているチームが、あんなにうかつでいいはずがない。この2点目を失ったことで、後半の反撃のイメージは完全に狂わされた。

攻撃も、澤がマンマークをつけられて封じ込まれた。他の選手は、澤に頼らずに打開することができなかった。チームとして澤マーク破りのアイディアを持たずに、「ただ」サッカーをやってしまった印象だ。結果論かもしれないが、例えば、澤を相手最終ラインの中に潜り込ませて、同時にマーカーを埋没させることができていたら、他の選手が使えるスペースが中盤に生まれたかもしれない。前半30分を過ぎた頃から、徐々に最終ラインの裏が空き始めただけに、澤への「勝負パス」を送るチャンスもできたかもしれない。

 後半は、なすすべなく時間だけが過ぎていった感じだ。選手交代も効果的とはいえず、唯一パワーで対抗できそうな荒川も投入できないまま、カードは使い果たされた。

 日本の技術は、今大会中どのチームにも一目置かれていた。しかし、「自分とボール」との関係だけで、サッカーは成立しない。日本は男子同様「人と人」との勝負に敗れたのだ。「敵を倒す」という考えが、日本サッカーにはもっと必要なのかもしれない。悔しい。W杯出場の行方は、3位決定戦に持ち越された。

のだが、準決勝第2試合で敗れた北朝鮮が、試合終了後の審判、そして観客への暴力行為をはたらき、なんらかの制裁が加えられることになった。ひょっとしたら、3位決定戦は中止になるかもしれない。

2006年07月24日

●南北戦

つーか昨日のエントリーなんなんだろ。「虹の彼方へ」とか言って、自分で書いたくせに相当恥ずかしくなってきた。センチメンタルすぎるのはよくないよね。でも寒いんだもんアデレード。心暖まりたいんだもん。そんな時にタイミングよく虹とか出てくんなよ、空め。って感じだ。

で、まあその問題は先送りするとしてだ、今日は日本が準決勝でどこと当たるか決まるわけで、いつものハインドマーシュ・スタジアムへ、北朝鮮×韓国の試合を見に行ってきた。同時刻別会場でやっているオーストラリアがタイに負けるわけなんかないので、北朝鮮は、引き分けなら2位通過。勝てば、オーストラリアとの得失点差6を逆転されない限り1位通過という状況。一方の韓国は勝たなくちゃW杯への道が断たれてしまう。

韓国は戦い方を変えてきた。センターフォワードのチャ・ユンヒを、センターバックで先発させた。北朝鮮のエースのリ・クムスク潰しだ。しかもそこそこ持ちこたえてしまう。リ・クムスクは逃げていた。今大会、何か知んないけど、クムちゃん動き過ぎ。左右に流れても怖くないってば。でもクムちゃん、中央にいると恐怖。足元にパスもらう直前にDFからちょっと離れて、トラップした瞬間に前向いちゃう。これ、恐怖のどん底。「閉鎖病棟にヤクザと二人きり」ぐらい、恐怖倍増だ。

んでも、クムちゃんがせっかくチャンス作っても、今日のパートナーのパク・キョンスンが不発。シュート外したキョンちゃんのリアクションを見ていると、漫画ならこれ背景スミベタで真っ暗に塗って、天井からピンスポット当てたみたいに描くだろうって感じで、全身全霊で「絶望」を表現していたよ。

なんか、実力的には北朝鮮のほうが明らかにうわてなんだろうけど、お互い攻守が噛み合っちゃったようで、試合は膠着。もし引き分けだったら、日本、準決勝で北朝鮮とじゃん。開き直りますが、やりたくないじゃん。なんて不純な気持ちから、僕は心の中で北朝鮮を応援していたよ。本日限定、心の友よ。映画のジャイアンみたいに、今日だけは味方になっていたよ。

なんて思いつつ、まじで引き分けちゃう? みたいに本気で心配になってきた頃、やっと点が入った。北朝鮮、右サイドからの崩しがやっと点に結びついた。北朝鮮の右サイドバックのソン・ジョンスンって、上がってく時、たまに外じゃなくて中を上がんのな。中盤の右サイドをタッチライン際まで目一杯開かせて、そこでキープさせて、マーク引きつけさせて、ジョンちゃんは中を駆け上がる。ザンブロッタを気取っているのか。そんなジョン子にだまされて、韓国はゴール前が混乱してしまったよ。途中出場のキム・ヨンエが殊勲のゴールを挙げて、北朝鮮が決勝トーナメント進出を決めた。

にしても、北朝鮮はもたついてる印象だ。準決勝は頑張るだろうけど、日本と当たる予定の決勝は、その調子でチンタラしててくれ。俺の心の『北の家族』は、本日限りで閉店だ!

お知らせ
水曜発売の『エルゴラッソ』で、なでしこジャパンの記事を書きました。

2006年07月23日

●虹の彼方へ

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なでしこジャパン、中国に1-0で勝利。18分、柳田からのFKに宮間が飛び込んで挙げた先制ゴールを、最後まで守りきった。中国戦に勝ったのは実に9年ぶりなんだと。しかも大橋監督の采配がばっちり当たった。彼が就任して以来、今日がベストゲームで間違いないんじゃないだろうか。まじで気持ちよかった。試合終了後、アデレードの空に虹が架かっているのに気がついた。引き上げていく永里に、「虹きれいだね」ってスタンドから声をかけたら、ニッコリ笑ってくれた。虹もきれいだったけど、戦い終えたみんなの表情のほうが、一層心に染み込んできた。
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日本はこの日、中盤の布陣を替えて臨んだ。去年の東アジア大会で、柳田、酒井のダブルボランチが全然縦パス入れらんないのを見て以来、「早いとこ手ぇ打ってよー」と思っていたのだが、大橋監督はついにそのダブルボランチを解体したのだよ。

酒井を外して中岡を1ボランチで起用。中岡は長いボール蹴れるし、ダイレクトプレーの意識が高く、ルーズボールへの反応も評価される選手。ただ、さすがに強豪相手でいきなり先発はないだろなー、なんて思ったけど、大橋さんはやってきた。そして何より、中岡は期待に応えた。ポテンシャルすげえわ彼女。やるじゃん。

で、ダイヤモンドの底を中岡1枚にしたことで、今大会「やっぱレシーバーとしてサイドに置いたほうが持ち味生きるべ」と思わせる動きをしていた柳田を、左に使うことができた。まあ今日は、守備がメインだったけど、絞って下がる動きもサイドからのクロスへの対応も、ハードワークながらよくこなしていた。右の宮間も、代表ではしっかり守備しないと使ってもらえないことを、本人がよく分かってるみたい。そのうえで、「仕掛けてやる」って気持ちを持っている。素晴らしい。FK取れたのも、宮間の仕掛けが効いたからだ。

ただね、ピッチ全部を見渡すと、今日のでベストの布陣かどうかは、まだ判断できないと思う。日本に限らず、11人全部にスーパーな選手を並べられるほど、女子サッカー界の選手層は厚くないと思う。高校サッカーで言ったら、推薦で全国から有望選手引っ張って来れる私立じゃなくて、オール地元で揃える県立高校みたいなチームで戦わなくちゃいけないのが現状だと思う。そしたら、素材のよさを引き出せる「デザイン」を描くことが、チームとしてすごい大事だ。

そう考えると、「攻撃力でサイドの攻防を有利に進めたい」って理由でサイドバックをやってる安藤が、全然攻撃力を出せないチームになっちゃってる。本当もったいない気がする。性格がまじめなだけに、ちゃんと守備しなくちゃって気い遣ってしまうぶん、プレーに迷いが感じられてしゃあない。中盤を今日のメンバーで固定するなら、安藤は2トップの一角で永里と組ませてみても面白いし、中盤にもう一工夫加えるなら、宮間んとこに安藤、あるいは澤をUSAプロリーグ時代と同じくサイドに使ってトップ下安藤でもいいんじゃないかと思う。90分間上下できるスタミナを安藤は確かに持ってるけど、駆け上がる機会をたくさん作れないんなら、そのスタミナも持て余してしまう。上がりを自重しなきゃいけないほどタフな戦いを強いられるなら、サイドバックには他にも適任の選手がいるはずだし、安藤の攻撃力に期待するんなら、やっぱり前で使うしかない。今大会中にあるかどうかは分からないけど、もう1回「なでしこシャッフル」をしてほしい。

なんつって水を差すようなこと書いてしまったが、日本はグループ1位で決勝トーナメント進出決定。27日の準決勝、オーストラリアか北朝鮮か分かんないけどそれに勝てば、5大会連続5度目のW杯出場が決まる。でも、そんなもんは通過点にしちまえばいい。彼女らにとっての今大会のゴールは、アジア初タイトルなんだから。虹の彼方へ——the future in your eyes,wishes come true!!

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2006年07月22日

●みごたえあり

オーストラリア×北朝鮮はスコアレスドロー。今大会最高レベルのサッカーを見てしまったよー。日本は、W杯出場をかけての決勝トーナメントで必ずどっちかと当たるんだけど、かなり手ごわいよこれ。

オーストラリアは4-3-3の前6人のプレスが非常によく効いてた。すげえ訓練されてるって感じ。実は韓国も同じ4-3-3なんだけど、韓国は敵ボールの時の3トップの役割がきっちりしてなかった。似てるようで全然違うよ。ドラえもんとうまい棒のキャラ(「うまえもん」って名前らしい)ぐらい違う。

で、奪ったボールをトップに入れるんだけど、そっからは北朝鮮が踏ん張る。4-1-3-2のMFが素早く戻ることで、相手がトップに当ててからの展開を封じ込める。お互いの組織的な守備が見事に機能したって感じで、見応えあったよ。

ただね、両者とも完璧ではない。オーストラリアは4バックのラインが揃わない。DFと MFの間にボールを入れられた時、ラインにギャップができる。それにバックパスの処理も危ない場面があった。北朝鮮は攻撃時にボランチが仕事できてないし、つなぎにミスが出る。シュートまで持ってったけど、ポストに当たって入らなかったのは不運だ。つーか北朝鮮、シュート外した選手のリアクションが、めちゃくちゃ派手。なんか「和也が死んだ時の南ちゃん」みたいに、哀しみに包まれて泣き叫ぶかのようだった。つーかプレーが再開すればまたすぐ走り出すんだけどね。

あと、オーストラリアはダブダブの短パンはいてる選手がいなかった。もともと長い脚が強調されてて、動きもダイナミックに見えた。「露出」どうこうの問題でなく、スポーツ選手としてすごいカッコよく見える着こなしだと思った。

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2006年07月21日

●うずうず

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なでしこジャパン、中華台北に11-1で勝利。ただ、両チームの差はもともとこんなもんだ。同じ大会に参加しているとはいえ、どう転んでも勝敗は入れ替わらないほど、力の差は歴然としている。なので、この試合の結果から「日本は強い」と思い込んでしまっては早とちりだと思うし、そう思わせるように煽っても何にもならないだろう。「この勢いで次の中国戦も!」とか、言えないのだよ。そんなこと言ったら歯が浮くどころか、歯から翼が生えて、首ごと空の彼方へと飛んで行ってしまうのだよ。今日の勝ちと、中国戦や決勝トーナメントは関連なし! 別腹! たとえば弁護士の試験を明日受けるという人が、『行列のできる法律相談所』を見た勢いで受かるもんでもないだろう、というのと一緒だ。

今日は今日として、日本の得点シーンを並べてみる。

1点目●磯崎奪ってカウンター→右に開いて受けた永里から中央の大野へパス→DFがインターセプト失敗→大野がフリーでシュート

2点目●バイタルエリアで永里から大野へ横パス→大野は受けると同時にドリブルで縦を突破→パスの後、左へ動いていた永里がフリーでもらってシュート

3点目●左タッチライン際から宮間のクロス→永里、ニアでDFとGKに挟まれながらループシュート

4点目●右サイド安藤から永里へくさび→落としたボールを酒井から最前線の澤の足元へ→澤、振り向きざまシュート

5点目●左に開いた大野がGKの前へクロス→永里がボレー

6点目●澤が左を突破して、中央へパス→阪口、止めて、持ち直して、冷静にGK頭上を狙ってシュート

7点目●ボックスの外で柳田がノーマークに。タイミングを外してGKの頭上にフワリと浮かすシュート

8点目●右CKからのこぼれ球を、ファーで澤が拾い、中岡に落とす→中岡がワンタッチでGKの前にロビング→永里ヘッド

9点目●ボックス内の右で澤がシュート→相手に当たってはねかえる→こぼれ球を中岡がシュート→相手に当たったこぼれ球を永里がヒール→澤GKを右にかわしてシュート

10点目●澤が間延びした中盤をドリブルで駆け上がる→右の安藤、2人に囲まれながら抜いてグラウンダーのクロス→ニアの永里、DFを体でブロック→中央の阪口がシュート

11点目●永里→阪口と渡ったボールを右で受けた中岡が折り返す→ペナルティスポット上で永里ヘッド
(注:最初、安藤のアシストと勘違いして書いてました。失礼しました)
以上。中華台北のDFはマークを逃がし過ぎ。あとボランチがバイタルエリアを空け過ぎ。DFとボランチの間をパスが横切ったら、日本は必ず誰かがフリーになれた。さらにGKは、正面以外のボールを気の毒なほど処理できなかった。枠に打ちゃあいくらでも入んだもん。釘のないパチンコみたいだ。

日本は永里・大野が再三見せた「横に崩す」動きを、次戦以降も狙ってほしい。それから安藤が独特の「落ちる」クロスを上げられれば、これは強豪国のDFも、目測を誤る可能性が高い。中1日で迎える中国戦で、日本の実力が初めて試される。俺は早く見たくてうずうずしてるし、選手も早く本物の試合がやりたいみたいだ。

そして、この日の夜、地元コミュニティFM「ラジオ・アデレード」の日本語番組に俺が生出演。「日曜日はなでしこジャパンを応援しに、ぜひスタジアムへ!」と、アデレード在住の日本人リスナーに呼びかけてきました。パーソナリティのジェイムスは、街でばったり会ったとか言って、岩清水と中岡のサインを見せびらかしてました。ラジオじゃ見れねえっつーの!
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2006年07月20日

●うぉー萌え萌え!

"Do you want money girl friends?"

アデレードのタクシー運転手は、確かに俺にそう聞いた。と思った。「マネーガールフレンド」って何? デートクラブの勧誘か何かか?

そしたら、moneyじゃなくてmanyだと。オージーの英語、訛りがきつくて分っかんねえー!

そんな会話をかわしながら、タクシーは今日もハインドマーシュスタジアムへと俺を運んでくれたよ。第一試合、北朝鮮×ミャンマーはグタグタだ。ミャンマーはね、サッカーなんかやってないね。あれは「守備」っていう別の競技だ。5バック3ボランチの計8人は、ボールがどこにあっても絶対自陣から出ない。小学生が「バーリヤーッ」とか言って、ハーフラインから立入禁止にでもしたかのように、見事に一歩も出てこない。北朝鮮は、最終ラインが無条件でハーフラインまで、無傷でボールを運んで、やっとそっから始まるって感じだ。ひとたびミャンマーがボールを持ったとしても、やつらパスなんかしないもん。99%クリアする。パスなんて残りの1%。1試合通して数本しかパス出せてないもん。

ところで、ミャンマーの5番は「ウォ・モエモエ」という名前であって、どんな子なのかなと思って写真を撮ってみたんだが……
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うぉー萌え萌え! とはならないね、正直。てゆうか今思い出したんだけど、『すごいよマサルさん』でモエモエっていなかったっけ? どんなキャラだっけ? セコマ部の女子だっけ?

んでよ、北朝鮮なんだが、去年とかだったらドーンドーンでFWまで長いボール入れてパワー勝負を仕掛けてた印象なんだけど、今大会ではチョイチョイとショートパスをつないで攻めようと意識してるみたい。そして、失敗が目立つ。特にボランチの12番が、ワンタッチでさばこうとしてるんだけどコントロールがやたらとブレる。ひょっとしたらこいつら、戦術の設定を間違えてるんじゃないだろうか。北朝鮮に死角ありだ。が、北朝鮮つったらやっぱ組織ディフェンスが真骨頂だもんな。3ラインがビシッと網を張って、見たことないけど国境線みたいな、板門店みたいな、注文の多い板門店みたいなことやってくるからなー。それ突破するのはたいへんだよ、きっと。

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2試合目。今大会の韓国を初めて見たけど、DFに高さあり、前線に技術あり。でも、そんなに強くないなこれ。男子と同じ4-3-3でやってるんだけど、前3人に守備の意識を植え付けられてない感じで、結果、中盤がスカスカじゃん。先制するまではタイに押し込まれた場面も多かったし。あと、去年の東アジアで見た180cmぐらいのデカいFW、名前忘れちったけどたぶんパクなんちゃらとかキムうんちゃらみたいなやつ、あいつ、いねえの。聞いたところによると、トレーニングについてこられず、呼んでもらえてねえんだと。確かに去年も90分フル出場はしてなかったし。体もたないんじゃしゃあないべ。ただ、途中からボランチに入った9番のパク・ウンジュンがね、いいパス持ってんだよこれが。コンパクトなフォームから、相手最終ラインの手前と裏に正確に蹴り分ける。たぶんアジアのどのチームにいても、彼女はレギュラー取れる実力持ってると思う。彼女は要注意だね。

と、いった感じで今日も2試合見まして、夕食はエミューとカンガルーとワラビーとクロコダイルの肉を食いました。
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つうかよ、オーストラリア人の諸君、エミューつったら国鳥だべ? エンブレムについてる鳥だべ? いいのかそれをもりもり食って? 日本人はヤタガラス食わねえぞ。

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2006年07月19日

●フットボールを踊ろう!

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女子W杯アジア予選。日本は初戦、ベトナムを5-0でやぶった。

あれー? 5点って、ちょっと控えめ? 今日のなでしこジャパンは、前半と後半でまったく別のチームだったのだよ。大会の初戦ということで慎重に入ったんだろうけど、しかも東アジア優勝の韓国が初戦4-0で負けて早くもがけっぷちという、調子乗ってるとやばいよという空気を読んだんだろうけど、前半はなんか期待はずれだ。39分、右CKを下小鶴が頭で折り返し、詰めていた澤が右アウトで押し込んでやっと先制。やっぱ慎重っていうより、思いのほか手こずった感じだ。

ベトナムは5バック3ボランチと、グッズグズなサッカーで守りを固めてきた。日本はセオリーどおりサイドから崩したいんだが、崩す以前に、左右に流れた2トップにボールが収まらない。落ち着かない。一旦相手ボールになると、中途半端に複数の人数がボールに寄ってしまうので、ベトナムが苦し紛れに蹴り出したボールを拾えない。やっべーなこれ。

後半、荒川に替えて永里を投入。同時に2トップの一角だった大谷と2列目のポジショニングに修正を加え、永里1トップの下に大野・澤・大谷が並ぶ形を作る。これで完璧にリズムが変わった。永里にボールがしっかり収まるので、2列目の3人が小気味よく動く。さらに、ボランチの柳田が最前線まで駆け上がり、左からズタズタに崩す。なんか、前半は選手の動きがぎこちなくて、まるで結婚式で親戚の歌でも聴かされてるかのような「ノッていいの? つーかノれるの?」みたいな雰囲気だったけど、後半はプロのDJがすげえスウィートなレコードをかけてくれたかのよう。なでしこたちが、やっと踊り出した。

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そして後半15分から大谷に替わって入った阪口が、裏にできたスペースをことごとく突いた。阪口は代表初出場で2得点。彼女はよかったよ、すごい。直線的に裏を突くんじゃなくて、斜めに走ってって、キュッとコースを変えてパスを引き出す。永里・阪口と中盤の選手は、実に息が合っていた。

大量得点で圧勝とはいかなかったものの、終わってみれば悪い試合ではなかった。中国戦以降の強豪との戦いに向けて、ナーバスになる必要はない。あさっての中華台北戦は、前半から踊り出そう!
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2006年07月18日

●女子W杯予選スタート!

ドイツから帰ってきてみたら、スポーツ紙もテレビも、そして知り合いも「ジダンの頭突き」ばかり話題にしてるという状況に、やれやれとため息をついたのも束の間、南オーストラリアのアデレードにやってきたのだよ。今日からは「女子W杯予選日記」として、7月31日の最終日まで、毎日更新を目標にブログを続けるのだよ。

香港で乗り継いだ飛行機の中で、ジャージ姿の女子の集団を発見。
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これ100%どっかの選手だべと思ったら、
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中華台北……。

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ちょっと頼むよ中華台北、あんたら「女足隊」て。日本は「なでしこジャパン」、オーストラリアは「カンタス・マチルダズ」。でも中華台北「女足隊」て。こっちがテレるっつーの。まあでもこれが台湾テイストな。「池袋ウエストゲートパーク」は「池袋西口公園」つってそのまんまだし、「LUNA SEA」は「月之海」つって、それは関取なのかそれとも焼酎か、みたいな名前になる(だったような)。それが台湾テイストな。ちなみに関係ないけど「闘莉王」も、最初字を見た時、関取かと思ったよ。

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さてだ、大会はすでに始まっている。近くの空港から飛び立つジェットの音に悩まされつつも、始まっている。1次リーグはA組(中国・日本・ベトナム・中華台北)、B組(北朝鮮・オーストラリア・韓国・タイ・ミャンマー)に分かれていて、各2チームづつが決勝トーナメントに進出。そして(やや複雑だが)中国を除く上位2チームが「女子W杯2007中国大会」に出場、3番目のチームが北中米カリブ3位とのプレーオフに回るのだ。「じゃあ中国は?」って話なんだが、来年本大会の開催国なので、出場権はすでに確保。「だからじゃあなんで予選に参加する?」って話については、今行われてるこの大会が「女子アジアカップ2006」も兼ねているからであって、来年のW杯行きの切符には関係なくとも、中国は「アジア王者」を狙って参加しているのだ。ふうー、説明疲れる。

んで、俺が着く前日に1次リーグB組の2試合が行われ、オーストラリアが韓国を4-0で、タイがミャンマーを2-1でそれぞれ破った。あひゃぁー、去年の東アジア優勝した韓国がいきなり4点くらって負けたんかよ。早くも韓国がけっぷち。そして18日の大会2日目、タイ×北朝鮮は9-0で北朝鮮の勝ち。あの国立のアテネ五輪予選当時から絶対的エースであるリ・クムスクが、左右両足からすげえ強烈なシュートを決めていた。怖えー。ちなみに北朝鮮は、アテネ五輪予選ではFILA、(男子の)W杯最終予選ではadidas、東アジア大会ではumbroのユニを着ていたが、今大会はhummelだ。きまぐれだ。きまぐれ平壌ロードだ。

この日、もう1試合は地元オーストラリア×ミャンマー。オージーの客達は「アロイージ」とか「キューウェル」とかって名前の入ったレプリカを着て騒いでいる。まったく気に障る連中だこと。そのオーストラリアは初戦から先発7人も取っ替えて、めちゃめちゃ手抜き。「総集編」と銘打っては過去のVTRばかり流す『HEY!HEY!HEY!』ぐらいの手抜きっぷりだ。そんな茶にごしっぷりを披露して、格下ミャンマー相手に2-0という凡戦を繰り広げてしまった。まあ、本気出せば強いんだろう。あと、この2チームの選手の、体格の差がすごかった。オージーはアスリートの体なんだけど、ミャンマーの選手は貧弱に見えたよ。これって栄養の違いなのか?
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で、試合後はベンチの横でオージーのサイン会。子供たちが大喜びで選手のサインをもらってた。日本のなでしこリーグでもこういう光景よく見るけど、ほんと女子の試合会場って、メジャーリーグみたい。と思ったが、俺はメジャーリーグを生で観戦したことがない。憶測で物を言ってしまった。すいません。
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長いけどあとちょっとだけ。明日はA組の2試合が開催される。日本はベトナムと、中国は女足隊と対戦。ベトナムは正直言って「もう帰っていいや」レベルのチームなので、なでしこジャパンのみなさん、容赦なく20-0ぐらいで勝っちゃってください。

以上。アデレード寒い。冬。コートいる。窓をそっと開けたら冬の風の匂いがして、ため息は少しだけ白く残ってすぐ消える。ほんとに以上! また明日!

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2006年07月11日

●We never watch alone

決勝戦の前に、ベルリン中央駅でこんなポスターを発見。
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おのれドイツどもめ、2006をちゃっかり2010に変えてやがる。そんなポスターは4年後に出しゃあがれ。そして恥をかきゃあがれ。ale-ale-ale。で、決勝戦なのだが、俺、チケット持ってなかったのな。当然現地で調達しなきゃいけないわけなんだが、俺は「すべて定価で入手」を自らに課している。当日、現場での相場がどのぐらいなのかは行ってみなきゃ分からないが、聞くところによると準決勝は2試合とも定価を割ったらしい。ブラジル人、イングランド人、アルゼンチン人あたりが大量にリリースしたためだろう。だったらよ、決勝も定価ちょいぐらいでいけるんじゃないと、ほのかな期待を抱きしめてトゥナイト、スタジアム駅へと向かった。

相場は予想をはるかに超えていた。交渉スタートの最低ラインがだいたい1500ユーロ。円に直したら22万5000円。がびーん。そっから手に入れた情報から、ドイツのネットオークションの前日の底値が1000だったことと、当日余ったチケットをダフ屋が1000で買い漁ってるらしいことが分かってきた。カテ問わず。だもんだから、決勝チケットの横流しは、プロも素人も関係なく完全に「商売」な。もうね、売るほうも買うほうも、悪いのび太みたいに目が三角に吊り上がってる。影には悪魔みたいな羽と尻尾が見切れてて、時々重低音でゲヘヘと笑う。キックオフ寸前まで、荒れ模様が続きそうだった。

別の作戦を考えるため、一旦マーケットを離れ、スタジアムをフェンス越しに歩く。フェンスの高さは約3メートル。昨日市内で見たベルリンの壁よりも低い。どこか突破できるような場所はないか。警備が手薄になるのはどんな時か。さおだけやはなぜつぶれないのか。歩きながら、口笛で映画『大脱走』のテーマを吹いていた。気合いがみなぎっていたのだ。そして、テレビ局の車とかが出入りする駐車場沿いの、前後を茂みに囲まれた一角を発見。茂みに身を隠して、中の様子を偵察する。
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そんな時、ちょうど元イタリア代表のロッシが到着したみたいで、そっち側に人だかりができている。警備員はそっちに増員された。千載一遇のチャンス到来だ。

『GO』の窪塚洋介みたくフェンスに向かってダッシュする。地面を強く蹴り、くさびのパスを入れるようにフェンスに手をかける。最終ラインを押し上げるかのように、その手で体を思い切り引き寄せる。なのに速攻見つかった。いい感じであったかのように書いてるが、実際は恥ずかしいほどバレバレだった。体はまだフェンスの外側で、ただ「へばりついてる」みたいなかっこうになっていた。警備員が言った。「何やってんだ!」。俺はとんちで切り返した。「アイム、スパイダーマン!」。……。突破作戦は失敗に終わった。つーか、第1ゲートのフェンスを越えられたとしても、チケットチェックのための第2ゲートはどうするんだという話がある。まあどっちにしても俺の作戦では失敗するしかなかったのだ。しょぼーん。

もうしょうがないね。また駅に戻って、チケット売ってくれそうな人を探すしかない。1000とか言わないでさ、定価でいいよぐらいの、なんなら昔話に出てくるじいさんみたいに「ばあさんや、W杯の決勝のチケットが余ってしもうたから、お地蔵さんにあげてきたど」みたいな親切な正直者はいないものかと、探しまわることにした。「I NEED TICKET」ってボードよく見るけど、俺あれ用意してなかったのよ。で、なんかキオスクの横に捨ててあった段ボール、けっこうデカめのA3ぐらいのサイズの段ボールを拾って、何も書かずに頭の上に掲げてみたのよ。そしたらよ、それでも来るの、人が。売りたい人も買いたい人も。よく知らないけどオニキスみたいに。結局あの文字なんか読んでないんだな、みんな。「あなたのそれはルアーですね」なんてうまいこと言ってくれた日本人の人もいた。OK、交渉開始だ。もちろん俺の希望額は「(満面の笑みで)ノーマルプライス」。

交渉の結果、イタリア人にキックオフぐらいの勢いの軽い蹴りを入れられ、ドイツ人には「コーラでも飲んでろ」と吐き捨てられた。そう言えば喉が渇いていたのでコーラを買った。「I NEED COLA JUST NORMAL PRICE」。2.5ユーロだった。

再び定価で交渉。するとドイツ人の老人が「こっちおいで」と、俺の手を引いて人混みを離れるように歩き出した。え? ヒット? 定価で譲ってくれるの? この人傘地蔵の人? 老人はグングン歩を進め、駅構内へと俺を連れていった。そして、電車の路線図を広げて言った。
「私らが今いるのはここの駅。で、この電車乗って何個目の駅で降りなさい。お金ない人はそっちで大きなテレビ見るといいど」
老人は、ブランデンブルク門のパブリックビューイング会場までの行き方を、丁寧に丁寧に説明してくれた。すべての男子が、自分の彼女にオフサイドのルールを説明するかのように、根気よく俺に説明してくれた。スタジアムのほうから、イタリア国歌が聴こえてきた。ああ、始まっちゃうんだ。
ベルリン門.jpg

結局、俺はスタジアムに入れなかった。代わりに、駐車場に停まってたテレビ局の中継車のモニター画面で、スタジアムの音を聴きながら、オリビアを聴きながら、見ていた。金はないけどサッカー見たいって感じの人たちがどんどん人が集まってきて、みんな地べたに座り込み、息をのみながら、スケールはちっぽけだけど『ニューシネマパラダイス』みたいな状態で決勝戦に見入っていた。俺らネバーウォッチアローン。最後は花火もみんなで見た。
中継車.jpg
優勝花火.jpg

6月9日の開幕戦に始まり、7月5日の準決勝第2試合まで、27日間で17試合を観戦した。チケットは、当初の計画通り、痛快OL通り、すべて定価で入手した。上出来だったかなと、自分では思う。試合観戦以外でも、サッカー好きがこんだけ集まってこんだけハッチャケる1か月間を、まるまる開催国で過ごせたことで実に楽しめた。見て、書いて、見て、書いて。頭がシャッフルされて、実に気持ちよかった。

日本に帰ったら、すぐにサッカーやりたい。言葉とか写真とかだけじゃなくて、ちゃんと体に、ドイツW杯を染み込ませたい。スコアとかデータとか、そういう数字っぽいものをパッと思い出せなくても、なんか「体が覚えてる」みたいな感覚で、俺はこのW杯を、自分の肉体の一部にしたいと思う。

そしてこのブログは、タイトルの問題は置いといて、7/18から『女子W杯予選日記』としてリスタートを切りたいと思っています。

2006年07月06日

●夕焼けジダン

準決勝第2試合。この1か月で4回目のミュンヘンだけど、午後9時からの試合を見るのは初めてだ。試合開始前、俺の席からちょうど対角線の方向、メインスタンド側左のコーナー付近の屋根の上に、夕日が沈んでいくのに気がついた。昼間は殺風景にしか見えなかったアリアンツ・アレーナの屋根が雲海のように見えて、1日の最後の陽射しを反射させてぴかぴかしている。天国にいるみたいだ。
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今大会限りで引退を表明したサッカー界の太陽も、夕焼けみたいに美しく、最後の輝きを放っている。フランス代表にとって、彼はまさしく太陽だった。彼を中心に惑星たちが周囲を回転した。彼を欠けば、チームは光と熱を奪われ、たちまち凍り付いた。今大会、グループリーグでは燃え尽きたかにも思えたその太陽は、決勝トーナメントに入って以降、再び輝き出した。

この日のフランスは、とにかく徹底的に無駄を省いて、90分間時計の針を進めた。スピードにあふれる展開はない。攻守の切り替えは、攻から守、守から攻ともに相手より遅れがちだった。けれど、ガリレオの唱えた地動説のように、それでもパスは回っている。太陽を中心に。エリア内でアンリにアジャストしさえすれば、フランスはもうそれだけで、どんなチームからでも確実に1点取れるチームだ。そして実際、エリア内でアンリが倒されPKを得た。

PKが左隅に決まると、蹴り込んだ太陽に万来の拍手が降り注いだ。

ジネディーヌ・ジダン。彼が最後の光を放つ場所は、W杯決勝の舞台ベルリンに決まった。


と、そんなことを書いてみたはいいのだが、フランスは次が7試合目だぜ。体力もつかなー。
つーか負けてしまったポルトガルは、決め手に欠いたよな。1トップのパウレタは結局この日も貢献できてなかったし、フィーゴとクリスティアーノ・ロナウドも、ドリブルで中に突っ込んでくタイミングを測ってる間に、マケレレにすーっと寄ってこられてコースを消されてしまう。しかし、それにしてもクリスくんみたいなドリブラーが、もし日本に現れたとしてもだ、「持ち過ぎ」とか言われてスポイルされちゃうんだろうな。ああゆ選手を育てて勝ってるチームって、国内では野洲高校ぐらいだもんね。持ち過ぎ君を、その特徴を維持したまま育てられるように、日本サッカーの育成界にトライしてもらいたいと思ったのだよ。

あと、お知らせ。現在発売中の『スポーツヤァ!』で、「もうひとつのW杯」という記事を書きました。
ドイツに来てから取材して書いた、サポーターたちのW杯物語です。
おひまだったら読んでみてください。

2006年07月05日

●ピルロだけが知っていた

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延長後半の終わりかけ、どうやったらこの試合に決着をつけられるか、その方法はピルロだけが知っていた。

決勝点はCKからクリアのこぼれ球を拾ったピルロが、右にいたグロッソに絶妙のスルーパスを送ったことで生まれたんだけど、その1個前のプレー、つまりイタリアがCKを得たプレーって、ピルロのミドルシュートだったんだよね、確か。そのシュートのシーン、場内のスローで1回見た限りでは、ピルロは打つ直前に目だけ動かしてチラッと右を見てたはず。録画してた人、確認してみてください。あいつ自分で打つ動作しながら、フリーになれる味方探してんだー。ラブミーテンダー。なんて思ってた矢先、まさしくそんなパスからの決勝点だった。俺もびっくりしたけど、これよ、ピルロも結構びっくりだったんじゃないだろうか。「ゴール前で俺んとこにボールが来るでしょ、そしたら味方がこうやって走ってて、俺がシュート打つふりしてそこにパス出すの。そういうのやれたら、PKとか面倒くさいことやんないで決勝行けるのになー。このCKでそういう感じになんないかなー……って、思ったとおりじゃん!」なんつって。ピルロは狙ってたにしても、こんなにドンピシャ都合良く偶然に条件そろうことなんか、広瀬香美の歌以外にはなかなかお目にかかれないんじゃなかろうか。
イタリアサポ.jpg

つーか話は変わるのだが、準々決勝からドイツに来てる俺の知り合いがよ、試合見終わった後スタジアムの外で待ち合わせの約束したんだが、そん時なぜか隣に美女を従えてたのよ。まじかわいい。矢吹春奈が上げたクロスを工藤理紗がダイレクトで合わせたような顔立ちだ。で、この人誰? って俺が聞いたら「ドイツ来る飛行機で隣り合わせに座った人で、俺がW杯見に行くんですつったら彼女もそうだって話になって、じゃあスタジアムで会うかもねなんつってたら、スタジアムでも席が隣だったんだよ」だと! ファーック! 偶然にもほどがあるっつーの、まったく。勝ち誇ってんじゃねーよ、まったく。はい? ロマンスの神様この人でしょうか? そんなの知らねえよ!!

話を試合に戻すのだが、ドイツはチャンスにことごとくミスショットしちゃったねー。組み立てはよかったと思うんだけど。片方のサイドにバラックとケール、ボランチが両方とも寄ってって人数かけてさ、相手の中盤も片サイドに寄せてさ、そこで勝負してバラックがガラガラの中央に突っ込んでったりとか、玄関からじゃなく勝手口から侵入するみたいな、そういう突破口を考えてたんだろうけど。でもシュートが決まんなかったんだよな。チケットなくてファンフェスタに集ってた人含めて、ドイツ人いっぱいこのドルトムントに来てたのに、残念なこった。
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開幕時にはしょぼいしょぼいと思ってたドイツだけど、冬の親善試合ではイタリアに4点取られて完敗してたドイツだけど、この準決勝までには、まあベスト4にふさわしいぐらいのチームになってたので、この短期間でのチームの伸びっぷりには実に感心した。なんか1試合ごとに成長してくって、『キャプテン』の墨谷二中みたい。

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決勝は片方イタリアか。サポは勝った瞬間、青い煙の発煙筒を炊いてたよ。デルピエロのゴール、もう1回見てえな。

2006年07月03日

●ロケット砲の弾の上にブルドッグ

だめだこりゃ。路面電車が途中で停まっちゃうんで、勝手に線路に降りて歩き出すスタンドバイミーなイングランド人がたくさんいた。じゃあ俺も、と思って降りたら、そっからスタジアムまで3kmだと。あ、る、き、た、く、ね、えー。アムステルダムで買った、カエルがマリファナ吸ってる俺のTシャツも汗でぐしょぐしょだ。

ゲルゼン.jpg
スタジアムはドーム式で、アメリカのバスケットみたく屋根から大型ビジョンが吊ってある。これが見やすいんだわ。その画面、国歌斉唱の時に見てたら、カメラマンがいい仕事してた。歌ってるイングランドサポをぐるーっと横にナメてく感じで、最後すーっと引くと、彼らのいるスタンドの手前にエリクソンがアップでフレームイン。この撮り方はちょっとカッコイイ。参考にしようと思った。けど俺はビデオカメラ持ってない。がくーん。しかもその、国歌の間に、俺の隣の席に、長くてきれいなブロンドの髪の人が、両手にビールを持ち、チケットを口にくわえながらやってきた。肩とか胸元とか、すごい丸出しっぽい。ラッキー、と思って、わざとらしくないように視線を動かしてみた。男だった。がくーん。

あと試合。だめだこりゃ。試合中俺何してたかっていうと、退屈してたもん。コスティーニャとデコが前の試合で退場くらったせいなのか、ポルトガルの攻めが単調でしゃあない。ボールは全部横に逃がしてばかりじゃん。1トップのパウレタも、テリーとファーディナンドという、ほとんどスリラーのクリップに出てくるバケモノみたいなセンターバック2人に挟まれているので、まともにボールなんかさばけない。実際のところ、イングランドのこのCBコンビは強かった。で、イングランドの攻撃陣は、ポルトガルのしつこいマンマークディフェンスに手を焼いた。ラインを高く設定され、ルーニーがだいぶゴールから離れた位置でくさびを受けざるを得ない。そうなったら2列目を、裏にできた広大なスペースに走らせたいのだが、ここにポルトガルの中盤が、とにかくよく並走して食らいついてった。

ルーニーが退場してクラウチが出てきてからは、もう本格的につまんなくなった。寝ようかと思ったぐらいだ。両軍ともに、分かりきったワンパターンの攻めを繰り返すばかり。イングランド人のサポは相変わらず口汚く、ナイフみたいに尖っては、触る者みなののしった。けれど、ロケット砲の弾の上にブルドッグが乗っているという、子供が考えたかのような絵柄の入れ墨をしたうえに、前歯が3本ぐらいかけて口の中がガタガタになってるイングランド人が、相手やら審判やらを罵倒してるんだけど、場内の画面に自分が映ってると分かった瞬間、そんなやつでも笑顔で手を振っていた。素晴らしい。俺もどんなに苛立っていても、テレビカメラとヘリコプターには、笑顔で手を振る余裕を持っていたい。「月が追いかけてくるよー」なんて言いながら、思い切り笑って全力疾走できる無邪気さを、忘れずにいたい。
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試合後ゲルゼンキルヘンの駅では、そんないい年したガキみたいなイングランド人が、ものすごくガッカリしていた。「女房子供を質に入れてじゃねえけどよ、盗んだ貴金属にニセの鑑定書つけてはコツコツ売りさばいて手にした金を、全部このW杯に捧げたんだよ俺は。それなのに、たった5試合で終わっちまうなんて、ファッキン悲しいぜ」。とは言ってないがだいたいそんなニュアンスの顔した連中が、3人並んで、顔を手で覆って泣いていた。友情に気づいたアシュラマンみたいに、泣き顔が3つ並んでいた。

そして駅では、モンテディオ山形のユニを来た外人がガッツポーズをしていたのだが、それはまた、別の話。
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2006年06月29日

●よるかぜ

そういえばブラジルは、日本と戦ったグループリーグ最終戦から2試合続けてドルトムントか。ラクですねー。でもってフルメンバーが顔をそろえたブラジルだけど、フルパワーでは戦ってなかったですねー、この試合。最初の20分、全然走んないんだもん。それでも、要所はきっちりおさえてる。前半終了間際の2点目、たぶん3本連続スルーパスだったと思うんだけど、あの場面なんか、さすがだなって感じ。も、前半だけで完全に勝負を決めちゃったもんな。

一方、ガーナはイライラしすぎ。プレーと関係ないとこでわざと肩とかぶつけてくるし。われどこ見て歩いとんじゃ兄ちゃん。ガーナの選手は歌舞伎町とか来ないほうが身のためだと、筋合いない俺から忠告させていただく。

後半も、ブラジルはやる気なし。深夜のコンビニのバイトぐらいにやる気なし。とどめの3点目を取っちゃった後は、間を持たせるのに苦労してたもんな。ドイツ人の観客は、試合終わるまで見ずにぞろぞろと帰っちゃったよ。しかも「ドイッチェランッ!」とか叫びながら。関係ないよね。柴田恭兵だよね。関係ないね。うるせいやつらだっちゃ。

と思ったけど、早めに帰った人、正解。帰りの電車、臨時便出し過ぎで、線路上で渋滞してる始末なんだもん。朝の東武東上線かっつーの。

と思ったけど、やっぱチンタラ帰ってきた俺が正解。つーか俺、勝者。勝者のメンタリティー。だって、こんなエロいブラジルのおっぱい姉ちゃんに会えたから。うちは布地の面積の少ない女性が大好きだっちゃ。
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試合後、スペイン×フランスをテレビ観戦して、さて帰ろうかと思ったけど、ドルトムントの駅前が、ブラジルの勝利を祝福するサンバカーニバル開催中。またしてもエロい姉ちゃんたちと、腰クイクイしながら日付変わるまで踊ってたよ。今日は1日涼しかったので、汗かいた体に、夜の風が気持ちよかったのだ。さてと、帰ってゆっくり寝よう。明日はノーゲームだ。
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2006年06月28日

●さよならオージー

ドイツに来てから3度目のカイザースラウテルン。駅前には恐竜がいた。
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そしてカイザース市民が再び目にすることになったこいつらも。
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日本に勝っちゃった時は憎たらしくてしかたがなかったけど、でも、見るたびにいつも、ちょっとだけうらやましくなっていったチームだ。3戦目、クロアチアに引き分けた日なんかさ、オージーサポを乗せた地下鉄がシュトゥットガルト中央駅に到着すると、普通に電車待ってる人らがサポ連中を拍手で出迎えてたのよ。セレブレーションよ。客まで凱旋気分よ。この日もカイザースの街は、2度目の来訪となった彼らに対し、「おかえりオージー」みたいな横断幕を出す家まであったぐらい、そこらへんの森からひょっこりカンガルーが飛び出してくるんじゃないかってぐらい、街がオージーたちをセレブレーションしている。
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これよ、日本がもし勝ってたら、「おかえりジャパン」になってたんだろうね。うらやましいー。「いいなー、あんなふうになりたいなー」なんて、思ってしまったよ。もしそんな時、僕のそばにおせっかいな中学生女子でもいたら、たぶんこう言ったはずだ。
「いっつもオージーちゃんの文句ばっかり言ってるクセに、本当は好きなんでしょ?」
わーお。センチメンタルだ。しかもそういう女子はだいたい「あたし知ってんだから」ぐらいに勝手に決めつけるパターンだ。図星だけど。

キックオフ。オーストラリアは3分間もパスをつないだ。でもこの3分間で、オージーはイタリアの強さを存分に感じたんじゃなかろうか。だって、パスは出せても「攻撃」はできないんだもの。パスコースがねえんだもの。ゴール前、チャンスにつながりそうなパスを出したいんだけど、その道筋を全部、イタリア人が警備している。いちばんエグいのはガットゥーゾだ。映画に出てくる大統領のボディガードみたいに、も、絶対ゴールに近づけさせない。したがってオージーの「パスアタック」は「ただのパス回し」にしかならない。テンポはいいけど足踏みしてるような、中学校の頃にやらされた運動会の行進の練習みたいだ。

エースとして活躍してきたキューウェルの不在も、オージーにはキツかった。代わりに左のアタッカーに入ったのは、本来右にいるブレッシャーノだったんだけど、これがまたイタリアの右サイドのザンブロッタにことごとく止められてしまう。見てないんだけど、パルマVSユベントスの時も、この2人の力関係はこんな調子なんだろうか。

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とにかくだ、ヒディンク・マジックとか言うけどさ、打つ手なしっつーか、いろいろやろうとすんだけど「しかしじゅもんはふうじこめられている」みたいな感じ。ガットゥーゾとザンブロッタに、あとこの日MOMに選ばれたGKのブッフォンは、試合中あれ、「マホトーン」とか言ってたかもしんない、まじで。

そんなこんなで、今日はオージー点取れなさそうって感じだから、イタリアが点取ったら試合はもうおしまいぐらいの雰囲気になってきた。オージーはもちこたえたよ。95分まで、余命を存分に生きた。立派な最期だったんじゃないか。

ラストワンプレー。PKの笛が、オージーへのさよならを告げた。ドラマだったらこっから回想シーンをスローモーションで流すとこだ。『東京タワー』だったらリリーさんの自筆のイラストが挿入されるページだ。回想から現実へ戻った瞬間、会場の大型スクリーンには、仇役さえセクシーに演じてしまう色男トッティの、片頬を上げてニヤッと笑う不敵な表情が映し出されていた。
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2006年06月26日

●オランダの仕掛けた罠

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昨日、アルゼンチン×メキシコ戦の帰りの電車で、ぷにぷにと柔らかそうなメキシコのボニータ2人組に、しこたまテキーラを飲まされたのち、旧東ドイツの田舎町の安宿へ戻ると、「さっきのは夢だったのかもな。それでもいいや、素敵な夢だったから」みたいな、バラエティー番組がお笑い芸人に歌わせるしょうもないCDの歌詞みたいなことを考えていた。いかん。疲れが重症だ。で、ちょっと目を閉じたらすぐに次の日。次の試合が待っている。サッカーを追いかけて街から街へ。俺はハウスこども劇場のテンプルちゃんか。

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今日はニュルンベルクでポルトガル×オランダ。欧州同士のノックアウト戦は、東ドイツの宿を照らす白熱灯以上に白熱した。シュート10本、支配率30%台のポルトガルが、シュート20本、支配率60%台のオランダに、1−0で勝っちまったよ。

オランダは、オーバーヘッドがバーを叩いたりしてチャンスを得点に結びつけられずに終盤を迎えてた。ここで、オランダはある仕掛けを張った。それは、ちょっとダーティーに嫌がらせをして相手の平常心を奪うと言う、よく言えば宮本武蔵みたいな、悪く言えばワイドショーの取材方法みたいな心理トラップだった。
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写真は本文と関係ないが、要は、相手を怒らせんのよ、わざと。返してあげるべきボールを、返さないで攻めてくとか。72分ぐらいだったかな。あれでピッチもベンチも客席も、ポルトガル側は相当怒りまくってたでしょ。「なんてことするんだ!」なんつって。ヒーローアニメで主人公そっくりのニセモノが街で悪さをしはじめたときの脇役のリアクションみたいな反応だ。で、そのアンフェアなプレーを、報復の意志を込めたファウルで止めたデコが、イエローカード。オランダの作戦、第一段階がこれで成功。次は標的をデコに定めた。

でよ、数分後の接触プレーでよ、ファウル(ハンドか?)を取られたデコがよ、ボールを手でつかみあげるとよ、オランダの選手たちはデコに体当たりをかまして、彼の手からボールをもぎ取ろうとしたのよ。前のプレーでデコはおデコに血がのぼってっから、この挑発に引っかかってしまうのよ。「何するばい!」。九州人顔の彼のことだ。そのようなことを心の中で叫んでいたのだろう。うざいオランダ人の手をね、少々ラフに振りほどこうとしたのよ。ものの5分で2枚のイエロー。オランダの罠が、デコをピッチから消し去ってしまった。

うーむ。それでも結局オランダは最後まで攻めきれず、特別なインパクトも残せないままベスト16で大会を去ることになった。あとどうでもいいのだが、今日の俺の席、ゴールラインとカメラマンが重なって、シュートが入ったんだかどうだか見えなかった。ま、前後半ともに、こっちサイドは1本も入んなかったんだけど。がくーん。
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2006年06月25日

●アミーゴVSアミーゴ

決勝トーナメント1回戦。早速初日から好カード、メキシコ×アルゼンチンを観戦して来たのだよ。この俺の個人ブログの場を提供してくれているサブラ編集部は、俺に「世界のサッカーファンにお土産を」と、サブラの帽子を持たせてくれた。サブラのマスコットってサボテンじゃん。なので、緑色のサブラ帽子を、メキシコ人にプレぜントした。編集長、メキシコサポは喜んで被ってくれたよ。だいじょぶだあー。
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試合開始前の国歌斉唱。メキシコの選手ってポーズがユニークだあねえ。「アイーン」みたい。サポも両軍、気合い入ってる。スタンドは水色と緑のまだら模様。隣り合う者同士で応援合戦を繰り広げてるもんね。
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さて、キックオフだ。もうね、素晴らしいサッカーだよ、お互いに。序盤のメキシコは攻撃時、トップのボルヘッティと両ワイドが最前線に張り出す布陣。ボルヘッティの周りをフォンセカが動き回って、相手DFラインの穴をうかがっていた。
そして中盤は、「日本もお手本にしよう」と言われる中盤は、単純なパス&ムーブではなく、パス出す前に、フェイクなり細かいドリブルなり、なんか1アクション入れている。そしてパスを出したらムーブ。タイミングがあえばそこでワンツー。「ムーブ&パス&ムーブ」。これがメキシコのパスアタックだ。

一方のアルゼンチンは、リケルメの評価が高いけど、ちょろはげカンビアッソも負けてない。パスもらう前に必ず逆サイド見といて、大きく横に展開する。相手を広げて、中に寄せてまた広げる。理想的な散らし屋だ。

延長前半、メキシコが力尽きた。アルゼンチンは左から右へ、一発のサイドチェンジを成功させた時点で、勝負ありって感じだったっすね。メキシコは、デカくないから中盤でボールを奪いたい。ゴール前で耐えるとかはじき返すとかのことを「守る」って言うんじゃなくて、この国では中盤で「奪う」ことが「守る」こと。なので中盤では、ボールのあるほうのサイドに人を多く寄せている。一発のサイドチェンジで守備の薄いほうへ展開されてしまうのは、命取りなのだ。

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といった感じで、決勝トーナメント初日から、好ゲームを延長まで見れて実にラッキーだ。今日から準決勝まで、試合のある日は毎日観戦できそう。素晴らしいサッカーを堪能してきます!(ごきげん!)

2006年06月24日

●ヒディンクのアリバイトリック

クロサギ、ルパン、キャッツアイ。敵をだましてまんまと宝を奪い取るヒーローの物語は、いつだって見ていて痛快だ。サッカー界においても、そんな主人公にドンピシャ当てはまる人物がいたのだよ。オーストラリア代表監督フース・ヒディンクだ。

グループF最終戦、俺は日本×ブラジル戦を完全にパスして、裏カードのクロアチア×オーストラリアを見に行ってたんだけど、オージー、2回リードされて2回とも追いついて、2位通過しちゃったよ。まじで。ヒディンク率いるオージーの面白さは、俺のサッカー教室のコーチであるヒロが解説しているとおり、いわゆる「バイタルエリア」に人を置かないという作戦にある。
http://blog.seesaa.jp/tb/19223740

バイタルエリアに人がいない。そういう状態をわざと作っておくという作戦は、いわばピッチ内でのアリバイ工作なのな。「僕はサイドに開いてました」「俺は中盤の低い位置が持ち場だ」と、攻撃に加わる選手、相手からしたら当然マークをつけときたい選手が、みんなして「自分のポジションはゴール前中央じゃない」と主張すんだよな。犯行現場に犯人がなかなか現れない。銭形警部は気が気じゃない。そうやって、いちばんおいしいところをぽっかり空けておいて、つまり相手の警戒を薄くさせておいて、いざその時が来ればまんまとその場所にフリーで忍び込み、ゴール前で決定的なチャンスを作り出す。それがヒディンクの、アリバイトリックを利用した完全犯罪だ。

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この日のクロアチア戦、バイタルエリアで完全にフリーになる機会は日本戦ほど多くなかったけど、オージーの選手はポジションチェンジを繰り返し、相手守備陣を慌てさせてたよ。「あれ、今日こいつのポジションどこ? マークすんの俺でいいのか?」みたいに。ボールがハーフラインを超えるたび、トップのビドゥカ以外は、前線の選手が2回として同じ位置にはいなかったぐらいだ。キューウェルがすごい引いて低い位置でボール触ってたりして、クロアチアとしても捕まえどころがよく定まんなかったんだろう。そんな感じで、クロアチアは前のほうで相手を潰せなくなって、ゴール前で跳ね返す守備が多くなった。ミドルシュートに対して寄せが甘くなったのも、守備のラインが引かざるを得なかったせいだろう。

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終盤の決勝点っていうか同点ゴールは、高さで守りきろうとしたクロアチアに、高さで渡り合えるケネディーを送り込んだことで生まれた。ギリッギリ数センチって感じだもんな。相手の裏をかく作戦と、相手の武器に真っ向立ち向かえる秘密兵器。なんかこのチーム、漫画みたいだな。キャラ立ちサッカー軍団。決勝トーナメントも、オージー見に行こうかな。ヒディンクはゴールだけじゃなく、俺の心も盗んでいったよ。やっぱり書いてしまった。カリオストロの城だ。

あ、そうだこいつら、今年からアジア連盟だった。2戦目のブラジル戦、スタンドにはこんな幕掲げてたっけ。
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こういうことされた挙げ句、日本を差し置いて決勝トーナメント行かれると、なんかすごい悔しい。しょぼーん。

2006年06月20日

●馬鹿は同じことを繰り返す

今日は日本×クロアチア戦だが、チケットがないのだよ。すでにブラジル×オーストラリアを持ってたことだし、あまりにクレイジーな価格のチケットには手を出さないと心に決めているので、日本戦はテレビで我慢だ。

ドイツのテレビ局では、日本戦、リトバルスキー氏が解説してたよ。俺は大学で6年間もドイツ語習ってた(つまり毎年落第)のだが、知ってる単語は「グーテンモルゲン」「ダンケシェーン」「コピーレン」がせいぜい。最後の「コピーレン」は「コピーする」っつう意味で、大学時代、まじめに授業に出てたクラスメイトのノートをコピーしてもらう時にみんなで言ってたから覚えた。「ノート取ってる? 貸してもらっていいすか? マジ? オッケー、おい小田中、花崎、蒲生、仙石、手に入ったぞこれコピーレン!コピーレン!」「江橋おまえよく後輩に土下座する勇気あんな。でかしたこれコピーレン!コピーレン!」てな具合でだ。で結局テスト前に覚えた単語は「コピーレン」だけ。馬鹿はひとつのことしか覚えられないのだ。しかも6年間ちっとも変わらなかった。んでよ、そのリティーがよ、ドイツ語さっぱり分からん俺にもビッキビキに伝わるようなことを言っていた。聞き取れた言葉を拾い上げると「ミヤモト」「170何センチ」「ショート」。ショートはたぶん、英語のshortに近いドイツ語なんだろうと思うが、つまり背が低いってことを言ってんだろ。そういうことを半笑いで言うのだよ、あの色白めが。なんでそんなセンターバック使うんだ、みたいなニュアンスなんだろうか。だからその半笑いはやめろって。

試合内容は、俺ではなくこの人に振り返ってもらいたい。神保町フットボール協会の親分だ。

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「どうも親分ですが。この一戦だけを見れば、まあ上出来なんちゃうかな。中の上ぐらいや。亀梨ではないがKAT-TUNには入れるぐらいの出来にはなっとんねん。初戦に負けてメンバーいじって、そこそこなんとか上手くいくっちゅう、まあジーコジャパンらしい戦いやな。今日は選手の交代も早め早めやったやろ。それが普通やねん。こっちは実力的に劣勢や。そしたらピッチ上の状況を見極めて、どこが戦えてどこが戦えてへんのか見たらええねん。先手を打って撹乱して、そんでやっと五分五分やねん。本番で、初戦負けてから気づいてどうすんねん。遅いちゅうねん。何年監督やってんねん。ヒディンク見てみい。あ、言っちゃった。やっぱり、3年前と去年にあったコンフェデと一緒で、トーナメントには上がれんわ。あと1歩のところで勝ちきれへんねん。『あそこで勝っておけば』『あそこで点が取れてれば』『そもそもなんで最初からそれでけへんのや』そうゆうて後から分析してもしゃあないねん。え? どうやったら点が入るかって? シュートを打てっちゅうねん! シュートなんかは、ピョッといってグッてなって、最後はチョンでええんじゃ!」

以上、親分の怒りでした。

で、俺はというとブラジル×オーストラリアを観戦。ゴール裏、オージーサポのド真ん中に入り込んでしまったのだが、この連中ったら口が汚い。歌を歌ってる時と選手名のコール以外には、ほぼまんべんなく「ファック」が入ってる。この日の「ファック」の対象はおもに審判と、反対側のゴール裏で炊かれるフラッシュだった。「どこ見てんだファック!」とか「パチパチすんなよよく見えねえだろファック!」とか。終盤、80分を過ぎたあたりからすごい盛り上がってきた。今度はみんな口々に「It's the time」とか言っている。日本人の耳には痛い言葉だ。何度か決定機も作り、俄然こいつらのテンションが上がってきたところで、今度は相次ぐ自軍へのファウルの判定。苛立った連中は椅子を思いっきり叩いてた。スタジアムの椅子って、座面がペタンつって跳ね上がるじゃん。あそこを思いっきり叩くのよ。で、叩いてもまた跳ね上がってくるじゃん。そしたらまた叩く。繰り返し繰り返し叩く。馬鹿だよなー。
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試合後、選手の健闘を讃える拍手に混じって、ひとりだけ拍手とはちょっと違うポーズを取ってる人がいた。審判に向かって、中指がガッチリ立っていたのであった。
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でよ、まだあんのよ今日は。試合後、ミュンヘンの会場になぜか韓国のテレビ局が来てたのな。たぶん英雄ヒディンクの、神話の続きとかをリポートしたいんだと思うんだ。でもな、ここにいたオージーとブラジル人はな、とっことんこのテレビ局をからかってしまったのだよ。
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アナウンサーが立ち位置決める。カメラが回る。喋り出す。すると、遠巻きに見ていたはずのサポーターたちの中から叫び声が上がる。「アクション!」。その声を合図に、サポーターたちがアナウンサーを取り囲んで大騒ぎし、レポートを台無しにしてしまうのだ。これでは仕事にならない、とばかりに韓国テレビは場所を変える。サポーターは「だるまさんがころんだ」のように、ちょっとずつちょっとずつ彼らに近づいていく。立ち位置決まる。カメラ回る。誰かが叫ぶ。アクション! 大騒ぎ。大爆笑。また場所変える。立ち位置決まる。カメラ回る。アクション! 暮れなずむミュンヘンの光と陰の中、馬鹿は何度も同じことを繰り返していた。

2006年06月18日

●悪魔が来たりて笛を吹く

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ずっと気になっていたんだが、会場内で流れるYAHOOのCMはひどい。サウスパークみたいなチープなアニメで、一つ目のサタンが、ピッチ上の選手をひとりひとり拾い上げて食うという、そして骨を吐き出すという、なんのシャレだかさっぱり分からん悪趣味なCMなわけよ。で、今日のイタリア×USAの会場でも、当然流れてたんだが、なんか今日はそれだけじゃなかったよ。ピッチに本物のサタンがいたのだ。

クソ審判だ。

前半だけで選手2人を食い、後半開始そうそうにはもうひとり食った。こんなことされたら普通泣くよね。涙そうそうだよね。組み合わせが決まった瞬間から、グループリーグで俺が一番見たいと思ったカードだもん、絶対11人対11人で見たいじゃん。しかもよ、あのUSAのセットアタック、後半残り10分ぐらいでやってきたけどさ、ペナ付近に5〜6人入ってきて、スピーディーに人が動き、スピーディーにボールが動き、相手ディフェンスに穴が空いたらひと突きにグッサリとやるあの攻撃を見に来たってのに。実際、ビーズリーの逆転ゴールが一体何のファウル? リプレイも場内では一切流さないし。せっかくの好ゲームが、サタンのせいで台無しになっちまったよ。バカ審判め。おまえなんかイジメてやる。春は毛虫をおまえの背中に入れてやる。クラス替えした初日に、クラス全員に好きな人ばらしてやる。夏になれば、おまえの部屋で打ち上げ花火をやってやる。そして横から見たり下から見たりしてやる。秋が来たら、落ち葉でおまえのティンコをくるりんっと巻いてやる。冬の訪れとともにおまえを羽交い締めにして、熱いおでんを口におっ付けてやる。肉まんについてる紙を、読みかけの本に挟んでやる。クリスマスの鶏食ってベタベタになった手を、おまえの服で拭いてやる。そうやって、四季折々のイジメを繰り出してやる。おまえが俺にイジメられてる姿を街行く人が目にするたびに「あら、もうそんな季節になったのね」って思わせてやる。風物詩にしてやるからな。KAKUGOしろよクソ審判。

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でも、そんなクソ審判のせいで、意外な発見もあったのだから、心中複雑だ。USAのサッカーは、フィールド8人でやってもかなり面白いのな。デカいフットサル。アリだよな。たださ、しょうもないほど自分大好き国家アメリカのことだから、わざわざそういう競技作るかもしれん。「ファックな審判のおかげで、我が合衆国の正義と栄光が台無しだ。星条旗が汚されている。もうW杯なんか知んない。開拓精神あふれる我々が新しい組織作って、そっちで世界一になってやるもんね。9人制サッカーの世界一を決める“WSC”ワールドサッカークラシックの開催だ!」。あーあ、もしそんなことになったら、俺そっちも見に行こうかな。そしてブログに書くよ。

アメリカ人の審判はクソだ、と。

●飲み会日本代表

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オランダ×コートジボワール。シュトゥットガルトのスタジアムには日本人いっぱいいたよー。(写真の子は違う会場で会った子だけど)。このカードは結構ヤフオクとかでも人気あったらしいし、オランダ見たいとかドログバ見たいとか、観光がてら。でもよ、今日でC組の通過チームがあっさり決まっちまったのでよ、ちょっと拍子抜けだよ。コートジの両サイドは、ファンペルシとロッベンに1対1でやられすぎだって。俺の通う『大人のためのサッカー教室』のコーチは「第1戦とコンセプトをガラッとかえて、守備的に戦ったのが敗因。後半30分からのサッカーが、本当のコートジボワールだったのに」と残念そうに語ってた。グループリーグだけで帰国させるには、なんだかもったいないチームだけど、しゃあない。を観戦するため、シュトゥットガルトへやってきた。

が、大問題だ。疲れがたまってるのと、毎日サッカー見てる「慣れ」から、試合中に眠くなるのだ。正直、W杯のありがたみみたいのも麻痺してきてるし。開幕戦見てからまだ10日も経ってないはずなのに、なんだか遠い昔って感じだもん。それでも幸い、朝7時にはバチッと目が覚めて今日のスタジアムに向かうことはできるのだが、気を抜くと寝過ごしたり、もっと気を抜くと「面倒くさい」ぐらい言い出しそうで、自分が怖い。こうなったら、まぶたにバンテリンを塗ってでも、持ちこたえなければならない。

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ところで、今週末はまた日本戦がやってくる。俺が日本代表で期待しているのは誰かというと、稲本だ。ただ、ジーコジャパンって、最初のジャマイカ戦からずっと、稲本が輝けるチームであったことが一度もない。

稲本については、2005年1月頃『エルゴラッソ』で書いた。だいたいこんな文章だった。「だいたい」ってのは、実際に掲載された時のやつを少し手直ししてるからだ。稲本のキャラが伝われば幸いだ。

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『飲み会日本代表』
 ジーコジャパン体勢となって以来、日本代表という「飲み会」がいまいち盛り上がりを欠くのは、稲本が気持ちよく酔っぱらってないからではないだろうか。彼は、自らグイグイ飲んで騒ぐことで飲み会全体を盛り上げる、というキャラのはずだ。先につぶれても気にしない、帰りに記憶なんかなくたって構わない、ちょっとぐらいの汚れ物ならば残さずに全部食べてやる、ぐらいに飛ばしてくれたほうが、みんなも楽しく飲めるんじゃないだろうか。
 ところが、ジーコジャパンにおける彼は「幹事」あるいは「後輩」。つまり気配りの人という役割を背負わされているのである。東に酒の切れた人あれば、いってグラスに注いでやり、みたいな。そうじゃないだろうに。「ソウイフモノニ、私ハナリタイ」とは、稲本本人も思ってないだろう。飲み会がハジケないのはきっとそのせいだ。稲本よ、2002年のあの頃のように、「乾杯」の瞬間からガンガン飛ばしてくれまいか。会計は福西が立て替えるし、帰りは遠藤が運転してくれる。そして、「ソウイフモノ」は、中澤がやる。
 中澤。今やこの人が飲み会にいるといないとでは大違いだ。「やっべー、今日の飲み会中田さん来てんじゃん」みたいな不穏な緊張感も、今なら彼が解消してくれる。「ウイッス中田さん、今日は飲ましますよ」ぐらいの気軽さで中田英の肩を叩くだろう。宮本と助け合い、空いたグラスを下げ、三都主がこぼしたビールも拭く。そうしてるうちに中田英がいい具合にデキあがってくれたら、後ろの列から稲本が鋭くしゃしゃり出て、中田英の鼻につまようじを刺す。そして、左右の鼻に計6本のようじを刺したヒデに、こう言わせるのだ。
「こんにちは、ぼくドラえもんです」
 これなら飲み会全体が大盛況。もちろんサブ組が寿司を注文する暇もない。
 そう。稲本の役割は「気配り」なんかではない。ボランチなのに「(酒に)つぶれ役」なのだ。

というわけで、クロアチア戦ではデキあがった稲本に出番が来るよう、期待したい。

2006年06月15日

●ワールドカップビッグマネー

大会6日目。前の日バーゼルまで行って、で、ホテルが取れずにドイツ戻ってカールスルーエで野宿して、そのままチュニジア×サウジ戦を見にミュンヘンまで来たのだよ。も、ずーっと電車に乗っている。ワニは陸上と水中で生活するが、俺はどドイツへ来てからというもの、ワニが水の中にいるぐらい電車の中にいるんではないだろうか。もう正直クッタクタでさ、しかもあづいんだわドイツ。この日なんてあづくて電車ん中で、白目剥いてブッ倒れた人とかいたし、スタジアムでも、木更津キャッツアイの最終回みたいに、ストレッチャーに乗せられて酸素マスクつけられて看護婦にダッシュで台を押されてという、すごいシリアスな状況も見てしまったし。暑い中毎日ハッチャケていると、どっかで自分も果てるのではないかと心配になってくるよ。駅構内だって、こんなに人いるんだもん。
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でもさ、俺がブッ倒れようがそんなことみなさんには知ったこっちゃなく、それより日本代表頑張れということなんですよ。次クロアチアじゃないですか。ブラジルに負けたとはいえ、すごいいいシュートいっぱい打ってきたじゃないですか。何プルショって。ガイ・リッチーの映画に出てくるチンピラみたいな顔して。日本人役でVシネとか出したら100%「鮫島」みたいな名前の役が似合いそうな、相当な悪人ヅラしてるじゃないですか。ああゆう連中に、今度は引き分けでもいかんのですよ。勝たなくちゃいかんのですよ。トドメを刺さんといかんのですよ。

そしたら、俺の体調なんて、俺だってどうでもいい。俺の身体がどうなろうとも、クロアチアにしっかりトドメを刺せって話ですよ。なのでここで、もうすでに辞世の句を詠んでしまおう。

身はたとえ ニュルンベルクに 尽きるとも
トドメをかませ 大和魂

ええ、パクリですとも。吉田松陰だっけ? それすらあいまいなままパクリですとも。『おーい龍馬』のうろ覚えですとも。

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で、チュニジア×サウジの話に戻すね。俺はサウジの10番アルシャルフーブを見たかったのよ。確か最終予選バーレーンに行った帰りのドバイの空港のテレビでサウジとクウェートだったかウズベキスタンだったかとやってた試合を見て、すごいボレー見ちゃったんだよ。どんなやつなんだべと思ったら、いねえのこの日。サウジ人に聞いたら「たぶん怪我した」だって。怪我すんなよ。すんなよ怪我。でもそのかわり、ドーハの頃から見覚えのあるアルジャバーが交代で出てきてすぐに勝ち越しゴール。サウジ勝ったと思ったんだけどね、最後に、右サイド、オフサイ気味の選手にクロス上げられて、真ん中でフリーで打たれやがって。もうちょっとだったのに残念。アルシャルフーブ、次は元気に出てこいよ。つーかもう見に行かないけど。チュニジアはハーフタイムに、床に国旗を敷いて、たぶん神様のいる方角だと思うんだけどそういう方向を向いて、お祈りしてる人がいた。
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で、今日のこのスタジアム内で、もっとも激しかった争いはというと、ドリンクの容器の争奪戦だ。場内のドリンク類は、資源リサイクルのためプラスチックのカップに移し替えられて売られている。で、この容器代1ユーロが、飲み物代に含まれてんのな。ってことだから、飲み終わった後、この容器を返却すると、1ユーロ返してもらえんのな。でもそれ知らないやつが多いんだ。座席んとこに置いたまま帰るやつもいるし、ゴミ箱に捨てちゃうやつもいんのな。それ、拾って集めたらけっこうな金になんべ。というわけで、一攫千金を狙う強者どもが、試合前、ハーフタイム、終了後と、場内グルーッて歩き回って、カップを集めまくっているのだよ。もちろん、俺も負ける気はしねえ。時にはゴミ箱に手突っ込んで拾い、時には誰かが拾いそうな直前に体を入れてカップを足元にキープする。そしてこの日の俺の成果は20個。20ユーロつまり約3000円が手に入った。イエーイ! カンチョー!
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この、ドリンクのカップを争奪する戦いこそが、今現在の各国サポーターにとっての「ワールドカップ」なのである。
ちなみにここまで、俺が知ってる中での最高記録は、日本人サポの68個。彼は毎日カップを拾い、その金で次の日のチケットを買っているのだという。そして次の日も場内でカップを……。おまえがリサイクルしてんじゃん!
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●国境の南

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6月13日、ドイツを出てスイスへと渡った。電車で国境越える時って、座席に「パスポート拝見」つって両国の警察みたいな人が来んのな。で、「スイスに入国する目的は?」とおなじみのこと聞かれるんだけど、これが難しい。
「ワールドカップを見に行きます」
「おいおいおい、ワールドカップはドイツでやってるぜ。引き返したほうがいいんじゃね?」
「ですけどいいんですよ。スイスにテレビ見に行くんだから」
「テレビ?」
「そうテレビ」
「……なんだかわかんねえけど、日本人、ご苦労なこった」
「いえいえどうも」

このやりとりを計2回、ドイツ警察とスイス警察相手に繰り返す。自分でも馬鹿らしいと思うのだが、スイス×フランスは、バーゼルのパブリックビューイングで見たかったのだ。バーゼルと言えば中田浩二。地元のバーゼルサポに、浩二くんを応援してくれとお願いするために、Jリーグチップス浩二カードをたくさん配ってやろうと計画していたのだ。FCバーゼルのスタジアム「St.Jacob's Park」内にある「ハットトリック」とかいうスポーツパブに、意気揚々と俺は乗り込んだ。

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が、たいへんですよ。浩二くん、ぶっちゃけあんまし人気ねいっす。理由は「だって試合出ないんだもん」。がびーん。とかなんとか言っちゃって、本当は浩二くんが大好きでたまらないんだろおまえら。愛してるって最近言わなくなったのは、本当に浩二くんを愛し始めたからなんだろ? ならばカードあげるからさ、正直に喜んでよ。「えー、でもカードの字、読めないもん」。
がっがびびびーん。おのれスイス人め、おまえらもう少し愛想よくしろよ。俺は今日、スイス応援しにここまで来てやってんじゃん。ちっとは感謝しろって、もてなせって。なんか損した気分。さっきあげたカード、やっぱし全部返せ!

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と、俺は店を飛び出しかけたその時だった。
「ちょっとあなた面白い言葉しゃべるわね。それ何語?」
来たよこれ。なんつーの、捨てる神あれば拾う神? じゃあ、俺の話を聞け、2分だけでもいい。中略。
「中田浩二は頑張り屋さんね。ありがとう。すてきなギフトをいただいたお礼に、私たちから1杯おごるわ」
よかった。平和は保たれた。スイスはこの日、フランスに勝てなかったけど、俺は次もスイスを応援する。浩二くんを応援すると約束してくれたあの子のために。あの子……いけねい、名前聞くの忘れた。
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2006年06月13日

●女とデートしてたつもりが実は男だった気分(ドンデン返しの日豪戦)

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キックオフ1時間前。この頃の僕らといったら、とても無邪気だった。数時間後に訪れる未来のことなんて、まだ誰も知らなかった。

JPN1−3AUS

って、なんだよこの喪失感。オーストラリア戦が、すでに数日前の出来事のように感じられている。つーか80分までとその後のテンションのギャップ。温泉旅館で散々ハッチャけてる最中にヤクザ登場みたいな、女とデートしてたつもりが実は男だったみたいな、パシリに本能寺放火されたみたいな、なんとも説明できないわびしい気分。上がってって一気にストーンつって垂直落下だもん。せつなくて、胸が張り裂けそうだよなー。

でもオージーにとっては最高の1日だったろうな。大逆転のどんでん返しだもん。『ウソ800』を飲んだらドラえもんが帰ってきたみたいな気分。だったらオーストラリア人になった気分で、この一戦を楽しく振り返ってみるとするか。


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「イエーイ! ヒディンク最高。交代選手がガンガン活躍して大逆転だぜ。やっぱいい監督に恵まれた俺らは幸せだね。どっかの誰かさんなんか、守り固めたいはずなのにボランチの人選ミスしてるし、追いつかれてもどうしていいか頭働かなくて、逆転されてロスタイム入った後にやっと切り札のFW出して来やんの。ダメダメ遅せえっつーの。あの監督誰つったっけなー、確か『ジ』がつく人。あはははは、愉快だな。ピアノでも弾こうかな。『後手踏んじゃった、後手踏んじゃった』。あはははは。悔しかったら日本人も弾いてみろよ。は? 『だけど僕にはピアノがない』? それじゃあおまえ全然話になんねえんだけど。あはははは。そもそも日本人って変だよね。腐って糸引いた豆とか食うんだぜ、死んだ魚生で食うんだぜ。フグ? 生? 毒? 何で食うの? 意味分かんね。あとさ、イルカとかクジラとか、あんなかわいい生き物も食うんだぜ。かわいそー!!」

と、ここまで自分で書いてみたんだが、さすがに自分でも腹が立ってきた。ボランチの交代ミスは俺らもみんな分かってんだけど。ええ。福西は完全に足止まってました。まったくボール奪いに行かなくて超頭来ました。ただ立って歩いてるだけで全然プレッシャー行かないから、そっちのボランチからパス出し放題にしちゃいました。ええすいません、分かってるんですけどすいません。そんな燃料切れのボランチを替えずに取っとくし、そのうえ交代で入ったボランチも、ボールホルダーにアタックできるタイプの稲本じゃなくて、展開系の小野でしたすいません。おかげで最終ラインはズルズル下がりましたよすいません。自信なくてすいません。セットプレー守備も課題なんですが、同点ゴールのシーンみたいに、スローインもセットプレーとして考えてる優秀なチームには太刀打ちできませんすいません。ええ、大黒出すならハーフタイムで高原と替えるのが正解ですよ。みんな分かってるんです。でも監督が気がついてくれないんですよすいません。それと、
お め え ら だ っ て
カ ン ガ ル ー 食 う じ ゃ ん !!

そう。オーストラリア代表は「サッカールー」とか言う愛称で、カンガルーはチームのマスコットでもあんのよ。食うくせに。で、サポーターも、カンガルーのビニール風船人形とかかついで来てる人が多かったのよ。でさ、カイザースラウテルンからの帰りの電車で、そのカンガルー人形をドア付近の床に置いてたやつがいたんだよ。チラっと視線動かした時、その太くて長いしっぽが一瞬見えたわけ。その瞬間「アヒャーァ! 電車ん中にデカいトカゲがいる!」って思ってしまって、超びびりました。

2006年06月10日

●背の高いやつはジャマン(ドイツ×コスタリカ)

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これだもん。ゴール裏5列目の席で俺、すげえ楽しみにしてたのに、前のやつが身長2mぐらいあんだもん。こいつ絶対、俺らよりも酸素薄いんだろうね。ナチュラルで高山病なんだろうね。

さて、2002年大会までと違って、今回は開催国が開幕戦を戦うことになった。地の利があるとは言うものの、決勝までを見据えてるはずのドイツにとって、大会の初日から登場とあっては、コンディション調整も難しかろうに……。

そんなことを考えてしまった。
ドイツがあまりにしょぼすぎるからだ。

こないだ日本に2点取られたのは、まだ調子が上がってないからだろうななんて思ってたけど、おいおいそっからちいっとも上がってないじゃないかよ。90分とおして、相手のグズグズなパスミス以外では、まったく中盤がボールを奪えてないもの。はっきり言ってやばいべ、これ。コスタリカのワンチョペ(スタンドの観客は「チョペ」って呼んでいた)に2点やられたけど、どっちもそこに出したパサーにプレッシャー行ききれてないもんね。後半からボランチ2枚にしたっぽいんだけど、そんでもつかまえられないんだもん。グループリーグ脱落は、まさかないとは思うけど、でも、うかうかしてられないだろうドイツ。つーかドイツ人。夜中の2時を回った深夜特急車内にもかかわらず、まだビールを飲んでまだ歌を歌ってる君たちのことだよドイツ人。おまえらそんなに浮かれてる余裕あんのかって。つーか行きの電車でもさ、スタジアム最寄り駅の直前に「次はナントカナントカ」って車内放送流れた瞬間、「イエーイ」とか言うなよ面白すぎるから。もうすぐ電車が着くよって聞いたいい大人どもが「イエーイ」って。

あとね、あと、ドイツ人のすごいとこ。満員電車の中に瓶ビール持ち込んでさ、いきなり近くの人に「すいません栓抜き持ってませんか」って聞いてたの。知らない人にだよ。いやいやいくら何でも。道ばたで「ライター持ってませんか」ならまだ分かるよ。でも「マイ栓抜き」持ち歩いてるやつなんているわけねえじゃん!

……と思ってたよ、今日までは。でもな、そこでな、出しやがったんだよ栓抜きを! ドイツ人Aに「栓抜き持ってませんか」って聞かれて、ドイツ人Bは「ああはいはい」ぐらいな気安さでポケットから出したんだよ栓抜きを! 何で持ってる? お国柄? お箸の国の人として言わせてもらうが、そんな俺らも箸はさすがに持ち歩かないし、「すいません箸持ってませんか」って言われても絶対に他人に箸は貸さないんだけどなー。

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ええ、また脱線しましたね。ドイツは次節、ポーランドが相手だ。ポーランドも後半だけテレビで見たけど、しょぼかったねー。スモラレクはいい動きしてんだけど、攻めのパターンがいかんせん少ない。母親が手を抜いた日の弁当のおかずぐらい少ない。パックンマックンに例えれば、パックンはキャスティングされる目処が立つんだけど、マックンの出番が少ない。後半ポストに2度も当てたのは不運だが、この国もなんだかW杯記念受験レベルなのかなと。しょぼいドイツはしょぼいポーランドとしょぼい試合をして、それでも勝ち点3は持ってくんだろう。次節でドイツのグループリーグ通過と、ポーランドの帰国の日程が決まるんだろう。

エクアドルは次、ドイツ×ポーランドの翌日に試合を行えるという日程面のアドバンテージもあり、俄然生き残りの可能性が高まった。次のコスタリカ戦は引き分けで十分。2節までで勝ち点4、得失点差+2なら、このグループはほぼ間違いなく突破できるだろう。